· 

描写の力

東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。

 

大学に入ると、レポートや卒論を書く必要から、アカデミックライティングの基礎は1年生の段階で学ぶかもしれません。

けれども、一方で、ナラティブなタイプの文章を書く訓練も欠かせません。就職活動の際のESなどはこれに当たるでしょう。そこで、必要になってくるのは描写です。

秋学期に、某大学の国語表現法では、このタイプの文章を書く訓練をしています。ところが、アカデミックライティングと違って、何を書くように要求されているのかが、なかなか理解されないのです。経験もないし、文章の種類を考えたこともないのですから当然かもしれません。

ところが、俄然、生き生きと書き始める人もいます。

ある人は、バスケットボールの試合を見ていて、楽勝だと思っていたのに雲行きが怪しくなり、あわやというところで、最後のシュートが決まって、知らない人と抱き合って喜んだという話を書きました。手に汗握る様子、歓声が上がり、歓喜の渦、というそれぞれのシーンが活写されています。見事でした。ともに息を飲み、勝利を分かち合った気分です。スポーツに関心のない私も、試合を見に行きたくなりました。

これが描写の力です。臨場感。共感。そのためには観察力も必要でしょうね。看護大学の人たちなので、将来、この描写する力が必ずや役に立つでしょう。

聞いてみたら、やはり、本が好きな人でした。

 

手に汗を握る描写の力
手に汗を握る描写の力