東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
学術論文の場合、序論で、すでにキーワードとなる語が複数出てくる場合があります。
それぞれに定義や典拠が示されるわけですが、そこで、ごちゃついてしまうことがしばしばあります。読んでいて、その分野が門外漢の私には、もう混乱から抜け出せない状態となります。
AとBはどんな関係なのか?包括関係?例示?並列?同義語であるなら、その異同は?
AとA'の関係は?どちらが先に提唱されたものなのか?
そこでは、執筆者が、それらの語について理解し、整然と提示することが求められています。これが、案外、できていないですね。おそらく、曖昧なまま進めようとして、読み手にも、整然と示すことができないということでしょうか。曖昧だということもわからないままなのかもしれません。
最近見たものでは、時系列に整理することで、かなりまとまりました。
結果を見れば、どうということはないのです。なぜ、まとまりがないのか、説明を聞けば納得できるのです。けれども、では、それが書けるかといえば、そうは簡単にいかないわけですね。自分にはわかりきったことなので、説明が難しいということではあるのですが、本当に、わかりきったことなのでしょうか。他人に説明できないことは、自分でも「わかりきっ」てはいないのではないでしょうか。
語彙を体系的に理解することなくして、他人にも説明することは難しいでしょう。
序論は、これから結論に向けて展開される論述を俯瞰する部分です。