東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
日本語学習者にとって、日本語の表記は過酷です。
ひらがな・カタカナが46×2で92、これだけでも大変なのに、それに加えて、漢字が新聞レベルで2000以上です。初級の学習者に泣かれ、心から同情しますが、こればかりはどうにもなりません。仕方がないよね、とは言えないのです。漢字なしでは、ほぼ読めませんから。漢字を抜きに日本語の文章を眺めてみましょう。助詞・助動詞、接続詞ばかりになってしまうのではないでしょうか。
さらに、初級の漢字クラスだと、形を覚えるだけでなく、書き順というものも仕込みます。止め、払いの話もします。ああ、ごめんね〜、毎週10文字ずつ増えていくなんて無理だよねえ、と思ってはいます。でも、容赦するわけにいかないのですね。
ここで、漢字を短期間でマスターした非漢字圏学生の話をしましょう。その人は、ペラペラ喋るものの、文字は全く読めなかったのです。ところが、半年ほどの間に、新聞程度なら困らないほどになったのです。なぜ?もちろん、尋ねてみました。そうしたら、その学生が街を歩いていたところ、何を売っているのか全くわからないお店があったのだそうです。それは、印鑑屋さんでした。漢字が読めないと、何のお店かということもわからない、それがきっかけとなって、猛烈に勉強を始めたのでした。その学生が言うには、自分で物語を作ったと言っていました。「聞」は、門の中に耳があり門の内側から、外の音を聞いている、といった具合です。
漢字が読めないと、日本語で書かれたものから情報を得ることができません。日本語でしか読めない情報もありますね。
あまりにもレアなケースでしたが、漢字学習の参考になるでしょうか。